相続の申告に、「間違い」という言葉は許されません。
万が一間違って申告してしまうと、場合によっては罰金などが課せられることがあります。
しかし相続の申告は、何度も体験するものではありません。
おそらくほとんどの方は、初めての相続申告になるかと思います。
そこで相続の申告にどう対処すれば良いのか、気をつけたい落とし穴2つと対策について取り上げます。
まず1つ目の落とし穴は、相続は誰でも大きく関係するということです。
「そんなことは分かっている」という声もあるでしょう。
寧ろ分かっているからこそ、相続について調べていることと思います。
でも身近にある事柄だと認識している人は、意外と少なくなっています。
例えば相続税です。
かつてはお金持ちだけの税金であり、一般人には関係ないと思っていないでしょうか。
しかし今は基礎控除額が下げられ、これまで相続税と無関係だった人も大きく関係するようになりました。
ただ基礎控除額が下げられたとは言え、相続税の納税義務が発生するケースはまだまだ少なくなっています。
でも相続税の支払い義務がないと安心仕切ってしまうと、落とし穴へ真っ逆さまに落ちてしまいます。
そもそも相続とは、大切な人がのこした財産をのこされた人に引き継ぐことを言います。
引き継ぐ人、相続人が1人しかいないのならば良いでしょう。
しかし相続人が2人以上いると、トラブルが起きる恐れがあります。
相続トラブルはドラマの中だけの話と思うかもしれませんが、現実にも有り得る話です。
そして2つ目の落とし穴は、相続には何があるのか分からないことです。
相続の申告を進める上で、誰が相続人かをハッキリさせる必要があります。
またどういう財産がのこされているのかも、きっちり調べなければいけません。
「うちは核家族だから相続人は調べなくても分かる」「貧乏だから財産はそんなにない」という声もあるでしょうが、思わぬ形で出て来る場合があります。
例えば、夫が病気で亡くなったとします。
夫婦には子供がおらず、夫には親戚や親兄弟もいません。
相続人は妻のみとなっているので、夫の財産は妻が全て相続することになりました。
しかし夫には離婚歴があり、前の妻との間には子供がいたと後になって判明しました。
法律的に前妻には相続権がないので、夫の財産を引き継ぐ権利はありません。
しかし前妻との間に生まれた子供には、相続権があります。
財産をどうするかは当人達で話し合うのが1番ですが、トラブルを避けるのは難しいでしょう。
また妻に内緒で亡くなった夫が生前に借金を背負っていた場合、妻が代わりに返済しなければいけません。
実は借金も相続財産に含まれており、借金を相続すれば返済義務が発生します。
しかし被相続人に借金があると分かれば、相続放棄で返済を免れることができます。
ただし相続放棄をすると、財産を受け継ぐことはできなくなるので要注意です。
では相続の落とし穴を回避するには、どうすれば良いのでしょうか。
まずは遺言書を何が何でも見つけ出すことです。
相続の落とし穴を回避するには、遺言書は絶対になくてはならないものです。
生前に被相続人から何も聞かされていなかったとしても、必ず遺言書を探すようにして下さい。
探す場所は自宅・病院・入所していた施設など、とにかく思い当たる場所全て探します。
ただし被相続人は自筆遺言書でなく、公証遺言書でのこしていることも考えられます。
公証遺言書でのこしている場合は、遺言検索システムを使えば探せます。
遺言検索システムを使うには、被相続人の戸籍謄本・相続人本人の戸籍謄本・印鑑証明書などの書類が必要です。
また遺言書を貸金庫に保管している方も、現にいらっしゃいます。
ただ貸金庫は本人でしか、開けることは許されていません。
例え血の繋がった間柄でも、簡単に開けることはできなくなっています。
もし被相続人の貸金庫を開ける場合は、相続人全員の同意が必要となります。
ただし遺言書は、必ずのこされているとは限りません。
長い闘病生活ではなく、ある日突然亡くなられてしまう方もいらっしゃいます。
こればかりは予想のしようもないので、遺言書がのこされている確率はかなり低いでしょう。
遺言書がのこされているかどうかが分からない状態で、相続の申告を進めるのはおすすめできません。
そこで頼りになるのが、相続の専門家です。
相続の申告は時に専門的な知識が必要になり、素人ではどうしようもない時が必ず出て来ます。
でも専門家であれば専門的な知識もあるので、上手く対処してくれます。
相続は非常に難しく、できれば避けたいのが本音です。
でも相続の申告をいつまでも野放しにすると、大切な人がのこした財産を全て失ってしまいます。
相続の申告をしないことこそ、最も深く大きな落とし穴と言ってもいいでしょう。
のこされた人が財産を相続することは、一種の供養でもあります。
大切な人を心から思っているのならば、今からでも遅くはないので準備だけでも進めておいて下さい。